リフォーム見積書の作り方——項目の立て方と、内訳に書く3つの経費

見積書の作成は、リフォーム会社の受注業務でいちばん時間を食う仕事です。現場を見て、拾い出して、過去の見積を探して、単価を引っ張ってきて、体裁を整える。1件に半日かかることも珍しくありません。しかも担当者ごとに項目の立て方が違うため、あとから原価と突き合わせようとしても比べられない、という会社は多いです。

この記事では、リフォーム見積書に書く項目の基本形を整理したうえで、建設業法で内訳の記載が求められている3つの経費(2026年7月時点)と、作成時間を短くするための4つの手順をまとめます。今お使いのExcelや見積ソフトを入れ替える前提の話はしません。項目の立て方をそろえるだけでも、作成と確認の時間は目に見えて短くなります。そのうえで、手作業では届かない「転記そのものをなくす」段階に何があるかも、後半で具体的に触れます。

目次

リフォーム見積書に入れる6ブロック

見積書の書式は会社ごとに違って構いませんが、入れるべき情報の並びはほぼ共通です。次の6ブロックで考えると、抜け漏れと「あとから揉める」パターンを減らせます。

リフォーム見積書に入れる6ブロックの図解。工事概要、工種ごとの工事内訳、材料費と労務費、諸経費(法定福利費・安全衛生経費・建退共掛金を含む)、調整と値引き、条件と有効期限の順に並ぶ

各ブロックで書く内容と、抜けたときに起きることを整理すると次のとおりです。

ブロック書く内容抜けると起きること
①工事概要工事名、施工場所、工期の目安、見積作成日どの物件のどの時点の見積か分からなくなる
②工事内訳工種ごとの数量・単位・単価・金額「工事一式」だと比較も原価管理もできない
③材料費・労務費材料と手間を分けて記載値引き交渉が「全体から◯万円」になり、粗利が読めない
④諸経費現場管理費、一般管理費、法定福利費など見えない経費を単価に溶かし込み、赤字工事の原因になる
⑤調整・値引き値引き額とその対象どの工種の利益を削ったのか分からない
⑥条件・有効期限見積の有効期限、別途工事、想定外事項の扱い追加工事の説明が「言った・言わない」になる

いちばん多いつまずきは②です。「内装工事一式 ◯◯円」で出すと、施主は他社と比べられず、社内でも実行予算に落とせません。最低でも解体・下地・電気・設備・仕上げ・建具・清掃・養生程度には割る、と決めておくだけで後工程が楽になります。

なお、⑥の「想定外事項の扱い」は、壁を開けてから分かる不具合が出やすいリフォーム特有の重要項目です。「既存部分に腐朽・シロアリ被害等が確認された場合は別途見積」と書いておくかどうかで、着工後の会話がまったく変わります。

内訳に書くべき3つの経費(建設業法)

元請の担当者と職人が、図面と見積書類を指しながら工事の内訳を確認しているイラスト

見積書の項目立ては、実は法律側にも下敷きがあります。建設業法第20条第1項は、請負契約を締結するときに、工事の種別ごとの

  • 材料費
  • 労務費
  • 適正な施工を確保するために不可欠な経費(国土交通省令で定めるもの)

その他の必要経費の内訳と、工程ごとの作業とその準備に必要な日数を記載した見積書を作成するよう努めることを求めています。この規定は令和6年の建設業法改正(令和6年法律第49号)によるもので、2025年12月12日から施行されています(2026年7月時点の現行法)。

3つ目の「適正な施工を確保するために不可欠な経費」は、建設業法施行規則第13条の12で次の3つと定められています。

  1. 法定福利費 — 建設工事に従事する者の健康保険料等の事業主負担額
  2. 安全衛生経費 — 建設工事従事者の安全及び健康の確保に関する経費
  3. 建設業退職金共済(建退共)の掛金

つまり、これらを単価の中に溶かし込まず、内訳として見える形にしておくのが法の求める方向です。あわせて同条第2項では、記載する材料費等の額を「通常必要と認められる額を著しく下回るもの」にしてはならないとされ、第6項では注文者側がそのような引き下げを求めてはならないと定められています。第4項では、注文者から請求があったときは契約成立までに見積書を交付する義務があり、第5項により電子データでの提供も認められています。

リフォーム会社にとっては、これは2つの立場に効きます。施主に出す見積では、諸経費の中身を説明できる状態になります。協力業者から受ける見積・出す発注では、労務費や法定福利費を削らせない/削られない根拠になります。「安く見せるために福利費を落とす」商習慣から抜けるための足場と考えるのが実務的です。

諸経費と法定福利費は「どこに入れるか」を先に決める

法定福利費や安全衛生経費を内訳に出すとき、多くの会社が迷うのが置き場所です。書式の正解は1つではないので、自社で1つに決めて全案件で同じにするのが最優先です。

置き方の例

  • 諸経費ブロックに独立行を立てる — 「法定福利費」「安全衛生経費」「建退共掛金」を諸経費の中に個別行で並べる。施主に説明しやすい
  • 工種ごとに内訳表示する — 各工種の労務費に対応する法定福利費を工種行の下に付ける。原価管理と対応が取りやすいが行数が増える

どちらでも構いませんが、社内の実行予算・原価集計の科目と同じ名前にしておくと、あとの突き合わせが一気に楽になります。見積では「現場管理費」、原価では「現場経費」のように名前が違うだけで、月末の集計で手が止まります。

「諸経費◯%」で丸めるときの注意

慣習として諸経費を工事金額の一定率で載せている会社は多く、それ自体は問題ありません。ただし率だけで出していると、法定福利費の額を聞かれたときに答えられません。率で計算していても、内訳の根拠(労務費のいくらに対する何%か)を1行残す運用にしておくと、説明を求められたときに探し回らずに済みます。

見積作成の時間を短くする4つの手順

リフォーム会社の事務担当が、積み上がった見積書類を仕分けして1枚の単価表にまとめているイラスト

項目が決まったら、次は作成時間です。時間を食っているのはたいてい「考える時間」ではなく、探す時間と打ち直す時間です。

手順1: 過去の見積を単価表に寄せる

多くの会社では、過去の見積ファイルそのものが単価表の代わりになっています。似た物件を探して、そのファイルをコピーして、数字を書き換える。この方法は速いように見えて、古い単価が混ざる・担当者しか探せない・値上げの反映が漏れる、という問題を抱えます。

やることは、よく使う工種の単価だけを1枚に集めることです。全工種を網羅する必要はありません。件数の多い上位20〜30項目で、見積作成の大半はカバーできます。材料の値上がりが続いている項目には更新日を入れておきます。

手順2: 工種と部位の名前を固定する

同じ作業が「クロス張替」「壁紙貼り替え」「内装仕上げ」と3通りで書かれていると、集計も比較もできません。工種・部位の名前を一覧にして固定するだけで、見積・実行予算・原価・写真整理のすべてがつながります。名前をそろえる話は現場写真の整理でも同じ効果があります(工事写真の整理が終わらない原因と、台帳づくりを短くする5つの手順)。

手順3: 見積・契約・発注・請求を同じ番号でつなぐ

見積番号と物件番号が別体系になっていると、請求のときに「どの見積のどの版で契約したのか」を追う作業が発生します。物件番号を1本決めて、見積・契約・発注・請求のすべてに同じ番号を持たせる。これだけで転記と照合の手間が減ります。番号の付け方は「年+連番」程度で十分です。

物件番号を1本に決めて見積・契約・発注・請求を同じ番号でつなぐ流れの図解。4つの文書がすべて同じ物件番号を持っている

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手順4: 追加・変更は「版」で残す

リフォームでは着工後の変更がほぼ必ず起きます。変更後の見積を上書きせず、版を分けて残すのが基本です。建設業法第19条第1項では、請負契約の書面に記載すべき事項として、設計変更や工事の中止があった場合の工期の変更・請負代金の額の変更・損害の負担とそれらの算定方法に関する定めが挙げられています(同条第2項で、これらを変更するときは変更内容を書面にして相互に交付することとされています)。

見積の版を残す運用は、この書面のやりとりをそのまま楽にします。「変更前」「変更後」「差額」の3点が並んでいれば、施主への説明もそのまま通ります。

協力業者に見積を依頼するときの期間

自社が注文者として協力業者に見積を求める場合、建設業法第20条第3項と施行令第5条の9により、見積のための期間を設ける必要があります。

工事1件の予定価格見積期間
500万円未満1日以上
500万円以上5,000万円未満10日以上
5,000万円以上15日以上

やむを得ない事情があるときは、10日以上・15日以上の期間を5日以内に限り短縮できるとされています(2026年7月時点)。リフォームの多くは500万円未満の工事ですが、「明日までに見積出して」を続けていると、協力業者側は積算せずに勘で出すことになり、結果として現場での追加請求や手戻りに跳ね返ります。依頼のときに、いつまでに何を返してほしいかを書いて渡すだけでも、返ってくる見積の精度は変わります。

手作業で削れるのは「探す時間」まで

ここまでの4手順は、道具を変えずに今日から着手できるものです。ただし手作業のままだと、削れるのは探す時間までで、次の2つは残ります。

  • 1枚のExcelを全員で触る問題 — 単価表を作っても、開いて上書きされ、いつの間にか誰かのローカルに分身が生まれる
  • 転記そのもの — 番号をそろえても、見積の明細を発注書と請求書に打ち直す作業は人が手で続けている

この2つを消すには仕組み側の話になります。順番としては、単価の持ち方を直す → 文書間の転記をなくす → 判断以外をAIに寄せるの3段です。

1. 単価表を「見るシート」から「呼び出す元データ」に変える

単価表は、眺めるための一覧ではなく見積が参照する元データとして持ちます。工種を選ぶと単価と歩掛(1㎡あたりに必要な手間の目安)が入り、数量を入れれば金額が出る。この形にすると、値上げの反映は元データ1箇所の更新で済み、担当者ごとの単価差もなくなります。

Excelのままでも、入力シートとマスタシートを分けてテーブル参照にするだけで、かなりのところまで到達します。件数が多く様式が一般的なら既製の見積・積算ソフトに任せるほうが早い場合もあります。どちらが向くかは後述の線引きで判断します。

2. 見積から発注・請求への転記をなくす

効果がいちばん大きいのはここです。手順3で番号をそろえたら、次は見積の明細を発注書・請求書に自動で写す段階に進みます。二重入力が消えるだけでなく、請求のもとになる数字が見積と必ず一致するので、金額違いの請求や発行漏れも起きにくくなります。インボイス制度対応の請求書も、同じデータから出力する形にできます。

現場写真の台帳と同じ物件番号でつないでおけば、報告書と請求の資料を別々に作り直す必要もなくなります。

3. AIに向くのは「探す・下書きする」まで

見積まわりでAIが得意なのは、過去の似た物件を探す・仕様書やメモから拾い出しの候補を出す・写真や記録から報告書の文章を下書きするといった作業です。逆に、単価をいくらにするか、値引きをどこまで許すか、この現場は手間がかかるという読みは人の判断です。

「AIが見積を作ってくれる」わけではありません。人が判断する材料を早く揃えるのがAIの役割で、そこだけでも作成時間は目に見えて減ります。

既製ソフトで足りる線と、開発が必要な線

自社の状況向いている選択
見積の様式が一般的で、件数が多い既製の見積・積算ソフトの導入
今のExcel様式を変えたくない/現場が慣れているExcelの作り替え+単価マスタの整備
独自の歩掛・原価の持ち方がある/既存の販売管理や会計とつなぎたい自社に合わせた仕組みの開発

大事なのは、この線引きを売る側の都合で決めないことです。特定ソフトの販売代理店に相談すれば、答えはそのソフトになります。まず自社の様式と件数を棚卸しして、既製品で足りるならそれを選ぶ。足りないところだけ作る。この順番が、いちばん安く済みます。

まとめ

  • 見積書は「①工事概要 ②工事内訳 ③材料費・労務費 ④諸経費 ⑤調整・値引き ⑥条件」の6ブロックで組む。「工事一式」をやめるのが最初の一歩
  • 建設業法第20条第1項は、材料費・労務費・法定福利費/安全衛生経費/建退共掛金の内訳と工程ごとの日数を記載した見積書の作成を求めている(2025年12月12日施行)
  • 諸経費の置き場所は正解が1つではない。自社で1つに決め、原価集計の科目名とそろえる
  • 作成時間を削るのは、単価表の集約・名前の固定・番号の統一・版の管理という探さない仕組み
  • 手作業で削れるのは探す時間まで。転記を消すには単価マスタと文書間の連携が必要。既製ソフトで足りる線と作るべき線は、売る側の都合ではなく自社の様式と件数で決める
  • 協力業者への見積依頼には、金額に応じた見積期間(500万円未満なら1日以上)が定められている

ReFastでは、こうした見積まわりの手作業を、今お使いのExcelや見積ソフトはそのままに、その外側に残っている探し物・転記・打ち直しだけを軽くする形でご支援しています。特定ソフトの販売代理店ではないため、既製ソフトで足りるならその選定を、足りなければ御社の様式に合わせた仕組みの開発を、中立の立場でご提案します。詳しくは内装・リフォーム/建設・工務店向けDX支援のページをご覧ください。まずは無料DX診断で、見積・現場写真・請求のどこに一番時間がかかっているかを整理し、効果の大きい順にご提案するレポートをお渡ししています。お申し込みは1分。導入を決めていなくても、お気軽にご相談ください。

「まずは短く聞いてみたい」という段階であれば、ReFast公式LINEからもご相談いただけます。友だち追加後、そのままメッセージを送っていただければ返信します。

参考(一次情報)

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